発売前から笑われていた『ウルヴァリン』の匂いトレイル。いちばん大きな声で笑っていた人たちは、財布を開いていなかったのね。
要点
- 調査会社Alinea Analyticsの推計で、『Marvel’s Wolverine』は発売3日で190万本・1億3000万ドルを売り、『Death Stranding 2』のPS5累計売上(1億2900万ドル)を上回った。
- 日本では9月15日にPS5で発売済み。パッケージ版・DL版とも8,980円、デジタルデラックス版9,980円、CERO Z(18才以上のみ対象)。
- 発売前から燃えていた「匂いトレイル」はホットフィックス v01.001.005 で薄くなった。ただし完全にオフにする設定はまだ無く、「今後のアップデートで検討中」止まり。
9月5日にレビュー解禁を発売5日前に置いた強気を書いたとき、わたしは解禁後にまず確認すべき数字は点数よりクリア時間だと書いた。訂正する。まず見るべきだったのは売上で、しかもその数字は点数とほとんど関係なく動いていた。Metacritic 77点、DLCを除けばInsomniac Gamesが10年以上出していない低さの点数を背負って、この作品は調査会社Alinea Analyticsの推計で2026年のPS5で6番目に稼いだソフトになっている。発売から3日での話ね。
190万本のうち100万本は、発売日を待たずに決めた人の分だった
数字を出したのはAlinea Analyticsの市場分析責任者Rhys Elliott。9月18日にGamesRadar+やKotakuが報じたSubstackの推計によると、『ウルヴァリン』は発売から3日間で190万本を売り、売上は1億3000万ドル。このうち100万本は発売前のデジタル予約で、パッケージ版の比率は22.9%。地域別では米国が53%、英国7%、フランス5%、カナダ4%と、北米一極の構図がはっきり出ている。
ここで重要なのは「190万本のうち100万本が発売前の予約」という内訳のほう。レビュー解禁は9月10日、発売は9月15日で、その5日間に入った予約は77点を見たうえでの購入だから、100万本まるごと「点数を見る前」と言うことはできない。予約のうちどれだけが解禁前に入ったかはAlineaの表に無いので、そこは断定しない。それでも半分以上が発売日を待たずに買うと決めた分だという事実は動かない。
点数が売上を殺せなかったのではなく、点数を殺せる場所に売上が居なかった。そう読むのが正確だと思う。

「デススト2の累計を3日で抜いた」は本当、ただし差は100万ドル
GamesRadar+などの海外媒体の見出し、そしてこの記事のタイトルにも使った『Death Stranding 2』との比較は、数字だけ見れば事実よ。Alineaの推計では『デススト2』のPS5累計は180万本・1億2900万ドルで、『ウルヴァリン』の3日間はそれを本数で10万本、金額で100万ドル上回った。1億2900万と1億3000万。推計値どうしの100万ドル差を「抜いた」と言い切るのは、この記事のタイトルも含めて、正直、見出しの都合が勝っている。
比較の物差しを揃えると景色が変わる。Alineaは発売後3日間で各作品を並べ直していて、『デススト2』の最初の3日は5170万ドル、『ウルヴァリン』はその2.5倍。『Ghost of Yōtei』は1億2190万ドルで『ウルヴァリン』より6.3%少ない。Kotakuが引いた同じ表では『Astro Bot』は3460万ドル、『Helldivers 2』に至っては1890万ドルで、こちらは85.5%少ない。GamesRadar+はこの3年に出たPS5作品で『ウルヴァリン』が追いつけない唯一の例として『Marvel’s Spider-Man 2』の3日で2億5000万ドルを挙げていて、『ウルヴァリン』はその52%ね。
2026年のPS5売上ランキングで見ると、1位『バイオハザード レクイエム』2億3100万ドル、2位『007 First Light』1億9900万ドル、3位『NBA 2K27』1億6400万ドル、4位『Crimson Desert』1億6000万ドル、5位『アサシン クリード ブラックフラッグ Resynced』1億3300万ドル、そして6位が『ウルヴァリン』の1億3000万ドル。5位との差は300万ドルで、これは次の週末で入れ替わる規模よ。9月3日のState of Playでモンハンワイルズの拡張もFF7の新作も2027年に流れた年に、ソニー自身の看板がようやく上位に顔を出したというのが、この6位の意味だと思う。
77点は今世代のソニーで下から2番目、それでも買った人の82%はスパイダーマン経験者
点数の側も隠さずに書いておく。Push Squareが9月10日にまとめた今世代のソニー第一パーティ作品のMetacritic一覧では、『Astro Bot』と『God of War Ragnarök』の94点を頂点に、『Marvel’s Spider-Man 2』90点、『Ghost of Yōtei』86点、『Days Gone Remastered』78点など21作が並び、『ウルヴァリン』の77点はその下から2番目。さらに下にいるのは62点の『Concord』だけ。同じInsomniacの前作『スパイダーマン2』とは13点差で、Alineaもこの77点を、DLCを除けば同社の10年以上ぶりの低さと位置づけている。Push Squareは同じ記事で、77は悪い点数ではないとも書いていて、わたしもそこは同意する。ただ「悪くない」と「ソニーの看板」は別の話ね。
では誰が買ったのか。Alineaの購入者データによると、『ウルヴァリン』を買った人の82%は初代『Marvel’s Spider-Man』を、70%は『スパイダーマン2』を、67%は『Miles Morales』を遊んでいる。つまりこれはInsomniacのマーベル作品を3本追いかけてきた層が、4本目を点数と無関係に買ったという構図。批評の点数と購入者の満足度は別の指標なので混ぜて語らないけれど、少なくとも「レビューを読んで買うのをやめた」人が主戦場にいなかったことは、この82%が説明している。
これは素直に褒めるべきところよ。初代『スパイダーマン』から3作かけて、Insomniacは「マーベルのゲームならこの会社」という信頼をコツコツ積んで、その貯金が77点の逆風を1本まるごと吸収した。貯金を作れる会社は多くない。
PlayStation公式チャンネルのゲーム機能紹介トレーラー。Push Squareが8月28日に紹介した際の一覧では、テクニック、レイジ、パリィ、スーツのクラフト、New Game+と、発売前にInsomniacが売りにしていた要素が並ぶ。その一覧に挙がっていなかった「センス」が、発売後いちばん語られる機能になったのは皮肉ね。
「100%聞いている」から4日、匂いトレイルは薄くなったが消えていない
売上の裏で、発売前から燃えていた話にも動きがあった。目的地まで青い色付きのガスが道を示す「匂いトレイル」は、海外のプレイヤーに「fart gas(おならガス)」というあだ名を付けられ、黄色いペンキと同列で笑われていた機能ね。発売当日の9月15日、Insomniacのコミュニティ&マーケティング・ディレクターJames StevensonがXで「この数日、100%聞いている」と投稿し、Push Squareがその文言から匂いトレイル対応を読み取っていた。
Kotakuが9月19日に報じたホットフィックス v01.001.005 で、投稿から4日のうちに結果が出た。匂いトレイルは不透明度が下げられ、ネオンのガスというより地面に滲む色のたまりに近い見た目になった。Insomniacの声明では、今後のアップデートで切り替え可能なオプションを検討しているとある。時期は言っていない。
薄くしただけで消していない、というのがわたしの引っかかりね。切り替えを付ければ済む話をなぜ最初から付けなかったのか。発売前に35項目のアクセシビリティ設定を告知していた会社が、いちばん目立つ視覚要素のオン/オフだけ用意していなかったというのは、設計上の理由があったと考えるのが自然で、それが何なのかは声明のどこにも書かれていない。

日本は8,980円でCERO Z、英国は米国より3割高い
国内の条件を整理しておく。発売は9月15日、PS5専用でPS5 Pro Enhanced対応。パッケージ版とDL版スタンダードが8,980円、デジタルデラックス版が9,980円で、スタンダードからのアップグレードは1,000円。デラックスで増えるのは限定スーツ5種と爪5種、テクニックポイント4つ、PSアバター4種と早期アンロックで、遊べる時間が増える中身ではない。レーティングはCERO Zで、18才以上のみ対象。爪で人を斬る作品をZで通す判断は正しいと思う。
値付けの話で面白いのはAlineaの地域比較で、Alineaの換算で米国が70ドル、英国は93.62ドル、ユーロ圏は91.84ドル、カナダは64.30ドル。英国は米国より3割強高く、英国のシェアが7%にとどまったことに、この価格差が効いている可能性はある。日本の8,980円がドルでいくらに当たるかはAlineaの表に無いので、ここで換算して高い安いを言うのはやめておく。
予約分を除いた約90万本のペースが、2週目に残るか
190万本という数字は立派だけど、その半分以上は発売前に積まれていた予約分で、それを引いた残りは約90万本(この引き算はわたしの計算)。次にAlineaが2週目の推計を出したとき、この90万本のペースが維持されているのか、それとも予約の貯金を使い切って失速しているのかで、この作品の評価は変わる。『Ghost of Yōtei』を6%あまり上回った初速が、2週目も上回っているとは限らないのよ。
もうひとつは切り替えオプション。「検討中」の言葉が実装に変わる日付を、Insomniacはまだ一度も口にしていない。
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出典
- Alinea Analytics — Wolverine sells 1.9M, despite the online mauling
- GamesRadar+ — Marvel’s Wolverine beat Death Stranding 2’s entire lifetime PS5 revenue in 3 days
- Insider Gaming — Analytic Firm Predicts Marvel’s Wolverine Has Sold 1.9 Million Copies During Release Week
- Kotaku — Wolverine Already Estimated To Be PS5’s 6th Top-Grossing Game Of 2026
- Kotaku — Wolverine Hotfix Nerfs ‘Fart Gas’ As Insomniac Explores An Option To Toggle It Off Completely
- Push Square — Wolverine PS5 Is One of the Lowest Rated First-Party Sony Games of the Generation
- Push Square — ‘We’ve Been 100% Listening’: Insomniac Already Acting on Marvel’s Wolverine Criticisms
- PlayStation.Blog(日本) — PS5『Marvel’s Wolverine』がついに発売! 開発者インタビュー
- PlayStation Store(日本) — Marvel’s Wolverine 製品ページ