「互換性が無いから戻せない」と訴訟の防御で主張していたものを、6年目に「戻します」と言い出した。9月21日に各媒体が一斉に伝えたBungieの声明「The Next Chapter for Bungie」の中身は、要するにそういう話ね。
要点
- Bungieが『Destiny 2』のContent Vaultで削除したキャンペーン・目的地・レイドを全プレイヤーに復元すると宣言。あわせて『Marathon』を脱出シューターから「より深いサバイバル体験」へ作り替える。
- 日本では:『Destiny 2』はPC(Steam)ほかで基本無料のまま。復元コンテンツはBungieいわく「全プレイヤーが遊べる」形だが、配信日と、追加料金なしかどうかは未発表。『Marathon』はPS5 / Xbox Series X|S / PCで2026年3月5日発売済み、Steam日本価格は4,480円(PS Store / Microsoft Storeの国内価格は未確認)。
- 6月9日の最終更新で「終わった」はずのゲームが続くことになった。ただし戻る時期は「今後数か月で詳細」としか言っていない。
まず経緯を整理しておくと、この会社は5月に「Destiny 3は作っていない」と明かし、6月9日に『Destiny 2』の最終コンテンツ更新を配信し、同じ6月に正社員292人を解雇した。9年続けた看板を自分で畳んだわけ。それが104日後、9月21日の声明で、新しいスタジオヘッドのPoria Torkanと『Marathon』GMのJosh Deaneの連名の「We are not done with Destiny」。手のひらの返し方としては、今年いちばん派手な部類だと思う。

削除から5年10か月、「戻せない」と言っていた側が戻すと言った
Content Vaultが導入されたのは2020年11月10日、拡張『光の超越』と同時だった。2017年の発売時に遊べた初期キャンペーン「Red War」と、複数のレイドがゲームから丸ごと消えた。PC GamerのSamuel Robertsが書いている通り、2017年のRed Warはいまやこのゲームの寿命の半分以上にわたって遊べない状態にある。9月21日までで2,141日、5年10か月(Kotakuは見出しで「6年以上」としているけれど、Vault導入日から数えるとまだ届かない)。VGCが指摘しているのは、Bungieが以前の著作権訴訟の防御で、Vault入りのコンテンツは現行システムと互換性が無いと主張していた事実で、今回の声明はその前提を自分で覆している。
復元の対象はBungieの言葉で「campaigns, destinations, and raids」。Kotakuはローンチ時のキャンペーン「Red War」を名指ししているけれど、Bungie自身は具体的なタイトル一覧を出していない。時期についても「Bringing this content back is not as simple as restoring old files」「That work will take time」と、要は白紙。技術的な理由は声明に書いてある。『光の超越』以降の変更で、ライティング・エンカウンター・敵・下回りのシステムを全部更新しないと動かないそうだ。
戻せるなら最初から消すなという話ではある。
それでも、ここは褒めておく。GamesRadar+によれば、Deaneは動画の中でVault入りのコンテンツを「what’s rightfully yours」と呼んだ。削除された物語をプレイヤーの持ち物だと認め、有料だったコンテンツも含めて全プレイヤーが遊べる形で戻すと言ったのは、ゲーム業界の撤回劇の中でも珍しく筋が通っている。買い直させるのではなく、持っていたものを戻す。ただし「無料で」とは一言も書いていないので、そこは声明の外に置かれたままだ。それでも、新スタジオヘッド就任後の声明の一番手がこれだったのは、優先順位の表明としては正しい。
署名40万筆と解雇292人、撤回の裏にある2つの数字
撤回の裏に何があったかは、数字を並べると見えてくる。Kotakuによれば、Destinyの継続を求めるファンの署名は40万筆を超えた。一方でPush Squareが伝える通り、6月の解雇は正社員292人。Game InformerはDestiny 2開発チームの大半が対象だったと書いていて、Kotakuの集計ではBungieがこの3年で600人以上を切っている。
つまり「戻す」と言った会社に、戻すための人が残っているかは別問題なの。PC GamerのSamuel Robertsはこの決定を、善意ではなくスタジオ存続のための「emergency maneuver」だと切っている。『Marathon』の更新だけでは足りない、閉鎖か規模縮小のインキュベーター化を避けるには畳んだはずのDestinyをもう一度開けるしかなかった、という読み。わたしもそれが実態に近いと思う。声明の中の「We lost trust, we lost incredible colleagues」という一文の重さは、書いた本人たちがいちばん分かっているはず。
ただし皮肉だけでは片手落ちで、6月9日の最終更新で区切ったはずの「終了」から104日で撤回が報じられたのは、40万筆が数字として経営に見えたからでもある。Bungieは声明で「Your voices mattered, and the way you showed up made a real impact」と書いた。文句を言い続けたプレイヤーが勝った例として、これは記録しておいていい。
Bungie公式チャンネルの「The Next Chapter for Bungie」。TorkanとDeaneが自分の口で、Destinyの復元とMarathonの方向転換を説明している。
『Marathon』は発売200日で「脱出シューター」の看板を下ろす
もう一方の主役『Marathon』の話をする。発売は2026年3月5日で、GameSpotが発売時に伝えた通り価格は40ドル、機種はPS5 / Xbox Series X|S / PC。Steamの日本価格は4,480円。発売から9月21日で200日しか経っていないのに、Bungieは「extraction shooter」の枠を外して「a deeper survival experience」に作り替えると言い出した。協力PvE・対戦PvP・PvPvEの3本立てにして、10月に「Nightfall Refresh」、12月に「Symbiosis」更新。PC Gamerによれば12月の更新で常設のPvEモードとソーシャル空間が入る。Push Squareの記事では、この12月更新はもともと9月予定だったものの延期で、シーズン制そのものも取りやめになっている。

数字を見ると、方向転換の理由は分かる。Steamのレビューは9月22日時点で64,226件、好評49,156件に対して不評15,070件、好評率76.5%の「やや好評」。ちなみに基本無料の『Destiny 2』本体は662,215件で78.6%。発売半年の新作が、9年分の不満を溜めた基本無料の本家(Steam配信は2019年10月から、レビュー母数は10倍)より2ポイント低い。評価の面で本家に届いていない、と読んでいい。Game Informerは別の角度から、メディアの批評は概ね好意的だったがプレイヤーの定着で振るわなかった、とまとめている。
ここは素直に言っておくけど、『Marathon』のゲームそのものは悪くない。PC GamerのSamuel Robertsは今回のコラムの中でも「one of my favourite games of 2026」と書いているし、同じコラムがシーズン進行のワイプのような意思決定の迷走を批判しているのも、ゲームの芯を認めたうえでの話だ。問題は遊びではなく、遊ばせ方の設計だった。Bungieが声明で「it was never intended to replace Destiny」と今さら言っているのも、裏を返せば代替として売ろうとして失敗した、という自白に近い。
Sonyのコスト削減が続く中で、これは「復活」なのか「延命」なのか
視野を広げると、親会社のSonyは今月だけでも、金のかかる企画を2つ切っている。小島秀夫の『PHYSINT』を予算と独占の理由で切った件も、『ラスアス2』の有志マルチを止めた件も、どちらも今月このサイトで書いたばかり。その流れの中で、Bungieが「Destinyは会社の土台」と宣言できたのは、逆に言えばこれ以外に売り物が無いからだと思う。
声明には4つの約束が並んでいる。Destinyの未来を作りつつ過去を復元する、Marathonを進化させる、開発の透明性を上げる、計画が変わったら一貫して伝える。4つ目は6月の自分たちへの当てつけみたいなものね。そして「Trust won’t be rebuilt through a single blog, video, or release」と自分で書いている。その通りで、ブログ1本で信用が戻るなら苦労はない。
結局のところ、決まっていないことが多すぎる。復元コンテンツがいつ来るのか、追加料金があるのか、Destinyの「新しい物語」とやらに誰が付くのか。292人を切った後の残りの人員で、9年分の技術的負債を抱えたレイドを何本作り直せるのか。Game Informerは今週中に『Marathon』の追加発表があると伝えているから、まずそこで12月という予定が12月のままなのかを見ればいい。そして『Destiny 2』の復元については、Bungieが「時間がかかる」以上のことを言えるようになるまで、40万筆は次の拡張や『Marathon』の課金に対して財布を閉じておいて構わないと思う。
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出典
- Bungie: The Next Chapter for Bungie(公式声明)
- VGC: ‘We intend to earn back your trust’: Bungie announces plans to bring back Destiny 2 and improve Marathon
- Kotaku: Destiny 2’s Red War And Other Vaulted Content Is Coming Back Over Six Years Later
- PC Gamer: Bungie un-cancels Destiny
- PC Gamer: Bungie unvaulting Destiny 2 content was a studio-saving emergency decision(Samuel Robertsのコラム)
- Game Informer: Bungie Announces Plans To Restore Vaulted Destiny 2 Content And Substantial Reworks To Marathon
- Push Square: ‘We Are Not Done with Destiny’: Bungie Commits to Sci-Fi Series After Fan Backlash
- GamesRadar+: Bungie says “we are not done with Destiny” and promises to restore all that content it deleted
- GameSpot: Marathon Launches On March 5, Will Cost $40
- Steam: Marathon(価格・レビュー数は2026年9月22日時点)