20年放置していたシリーズの新作が、発売初日に100万本。景気のいい数字だけれど、カプコン自身が勝因として真っ先に挙げたのは剣戟でも鬼の腕でもなく、発売までに何度も配った体験版だった。刀を抜く前の下準備で勝負がついていた、という話ね。
初日100万本は、シリーズ累計1000万本の10分の1にあたる
カプコンが9月7日に公表したところによると、9月4日に発売された『鬼武者 Way of the Sword』は初日で販売100万本を突破した。対応機種はPS5、Xbox Series X|S、Switch 2、そしてPC(Steam/Epic Games Store/Microsoft Store)。同時にシリーズ累計が1000万本を超えたことも明らかにされている。
この2つの数字を並べると、事の異常さが見えてくる。2001年から積み上げてきた累計1000万本のうち、10分の1をたった1日で稼いだ計算になるのだから。
前作にあたる『鬼武者 Dawn of Dreams』は2006年発売。約20年の空白を挟んだシリーズが初日で100万本に届くのは、素直に立派だ。休眠IPの復活は「懐かしがってくれる人がまだ生きているか」の賭けで、その賭けにここまできれいに勝った例は多くない。

体験版を配り倒した助走が、そのまま初日の数字に化けた
カプコンは今回の発表で、複数回にわたる体験版の配信と各地での試遊出展が認知の拡大につながり、初日の数字を押し上げたと説明している。ここが今回いちばん面白いところだと思う。
「体験版を出すと中身がバレて売れなくなる」という発想は、かつて日本のパブリッシャーが本気で信じていたものだった。カプコンはそれを捨てただけでなく、20年ぶりで知名度がゼロに近い新規客に対して、遊ばせて口説くという手間のかかる方法を選んだ。しかも1回ではなく何度も、だ。
20年寝かせたIPほど、広告より手に触らせるほうが早い。当たり前のようでいて、実際にやり切った会社はほとんどない。ここは全力で褒めていい。
Capcom USA公式チャンネルのローンチトレーラー。江戸期の京都を舞台にした宮本武蔵の立ち回りと、一閃を叩き込んだ瞬間の手応えがまとめて確認できる。
Metacritic86点は、今年のカプコンで首位の89点に3点届かない
ただ、評価そのものが飛び抜けているわけではない。GamesRadar+が8月31日時点でまとめた集計では、PS5版が66レビューで86点、PC版が16レビューで82点。同じ2026年のカプコン作品を並べると、『バイオハザード RE:レクイエム』が89点、『モンスターハンターストーリーズ3』が86点、『プラグマタ』が85点だ。
つまり「今年のカプコンの中ではレクイエムに次ぐ2番手タイ」。トップではないけれど、下でもない。初日100万本という派手な見出しの裏で、作品の完成度は同社の平均点に収まっている。

プレイヤー側の反応はもう少し温かい。Steamのレビューは執筆時点で10,711件、うち好評が9,489件で88%。ストア表記は「非常に好評」に入っている。Steamの好評率は「買った人が満足したか」、Metacriticは「批評家がどう採点したか」で、物差しが違う。ただ、批評家の採点が平均的で買った側の満足度が高いタイトルは、だいたい「粗いが手触りが良い」ゲームで、今回もその型に見事にはまっている。
絶賛と酷評が、ボス戦とオープンワールドできれいに割れた
レビューを読み比べると、褒める場所と叩く場所が驚くほど一致している。Kotakuはレビューの副題に「Capcom buries something special beneath a lot of compromises」と置いた。特別な何かが、山ほどの妥協の下に埋まっているという評ね。ボス戦は高く評価する一方で、オープンワールド化については「most poisons the dish」——料理を最も台無しにした選択だと切って捨てている。ザコ戦は3回目の遭遇で飽きる、素材集めは単調だ、とも書いている。25時間遊んでまだ未消化の探索が残っていたそうだ。
GamesRadar+のレビューも「It’s no Sekiro」と前置きしたうえで、戦闘の手触りとアクセシビリティを評価している。PC Gamerは83点をつけた。
要するに、ボス戦と一閃は文句なし。その周りに敷き詰めた広いマップと収集要素が足を引っ張っている。20年ぶりの復活作でオープンワールドを選んだ判断は、次回作までに一度考え直したほうがいい。
それでも初日100万本に届いたのは、体験版で触れた部分がちょうど良かったからでもある。体験版はボス戦を見せるからね。
デッドライジングは2016年、マーヴル VS. カプコンは2017年で止まっている
カプコンは今回の発表にあわせて、毎年の大型新作に加えて「re-activating IPs that haven’t had a new title launch recently」——近年新作が出ていないIPの再起動に注力すると明言している。鬼武者の初日100万本は、その方針に対する最良の証拠になった。
Insider Gamingは、この文脈で長く止まっているシリーズとしてデッドライジング(最後の新作は2016年)とマーヴル VS. カプコン(同2017年)を挙げている。デビル メイ クライ、ロックマン、逆転裁判あたりが次に来るという観測もある。ただしここは未確認の話で、カプコンが具体的なタイトル名を挙げたわけではない。
気になるのは、この手法が何度使えるのかということだ。体験版を何度も作って世界中の試遊台に出すのは、それ自体が新作1本分に近い工数を食う。拡張の投入が2027年までずれ込んだモンスターハンターワイルズを抱えたまま、休眠IPを何本も並行して起こせるほどカプコンの開発リソースは無限ではない。
もうひとつ、初日の勢いがどこまで持つのかも読めない。レビュー解禁を発売5日前に置いた『ウルヴァリン』のように、発売前後の設計で数字を作れる時代だ。鬼武者が本当に復活したと言えるのは、オープンワールドの粗さを承知した人たちが2本目を買うかどうかが見えたときで、その答えはまだどこにも出ていない。
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出典
- Onimusha: Way of the Sword sales top one million on launch day – Gematsu
- Capcom expresses continued interest in ‘re-activating IPs’ … – PC Gamer
- Capcom Bringing Back Old IPs ‘That Haven’t Had A New Title Launch Recently’ – Insider Gaming
- Capcom delivers its fourth hit of the year … – GamesRadar+
- Onimusha: Way Of The Sword: The Kotaku Review – Kotaku
- Onimusha: Way of the Sword – Steam