『ウルヴァリン』9月15日発売、レビュー解禁が5日前という自信の見せ方

レビュー解禁が発売の5日前。今回いちばん雄弁だったのは、トレーラーの派手なカットではなくこの一行のほうね。出来に自信の無い大作は解禁日を発売当日か前日にぎりぎり寄せてくるもので、9月10日午前8時(太平洋時間)という設定は、9月15日の発売までまるまる5日間、点数が市場に転がっているのを許すという宣言に等しい。Insomniac Gamesとソニー・インタラクティブエンタテインメントは、そこで殴り合えると踏んだわけ。

Insomniacの新作ウルヴァリンは9月15日、PS5独占で発売される。通常版8,980円、デジタルデラックス版9,980円。9月3日のState of Playでローンチトレーラーが流れて、宣伝の弾はこれで撃ち尽くした。

2023年12月に盗まれたロードマップは、3年後の今日を当てていた

この作品の発売日を最初に世界へ漏らしたのは、パブリッシャーではなく犯罪者だった。2023年12月、Insomniacがランサムウェア攻撃を受けて社内資料が大量に流出し、Kotakuが報じた内訳には2027年のスパイダーマン3、2029〜2030年のX-MEN、2031年以降の新規IPまで並んでいた。ウルヴァリンの欄に書かれていたのは2025〜2026年。

結果は2026年9月。レンジの下限ぎりぎり、つまり遅れた側に着地している。

ここを笑う気にはなれないのよ。あの流出以降、開発者の実名や未発表企画が晒され、社内のロードマップが延々と外野の採点表として使われ続けた。その状態で予定の範囲内に着地させたのは、単純に立派だと思う。

2023年12月のランサムウェア流出から2026年9月15日の発売までを4段階で示した年表。流出したロードマップ上のウルヴァリンは2025〜2026年と記載されていた。
流出から発売までの3年。公開情報をもとにLoot Times作成

敵はセンチネルそのものではなく、それを作らせている億万長者

物語の骨格は公式が先に開示している。ローガンは3年前に離れたミュータント部隊チームXへ戻り、リーバーズと名乗るサイバネティクス武装集団にさらわれたミュータントたちを追う。PlayStation Blogがリーバーズの雇い主として名指ししているのが、人類の優位を狂信する億万長者の実業家ボリバー・トラスク。X-MENの読者なら、その名前が最終的に何を製造ラインに乗せるのかは説明不要ね。

戦闘は「テクニック」と呼ばれる特殊技、味方との連携攻撃クリティカルストライク、そして殴るほど溜まるレイジで構成される。レイジは強化技に回すか、ヒーリングファクターの発動に回すかの二択。第3段階まで上げるとマーベルのBlack, White & Bloodシリーズを意識した単色演出に切り替わるという、いかにもInsomniacらしい見せ場も用意されている。

PlayStation公式チャンネルが9月3日に出したローンチトレーラー。爪の刺さる音と流血表現、そしてチームXの面々が短く映る構成で、新情報というより最後の一押しに徹した内容になっている。

2時間半でQTEは6回、炎上した「ボタン連打ゲー」説はどこまで本当だったのか

発売前に一度、この作品はSNSで盛大に燃えている。曰くQTEだらけ、曰くボタン1つを叩くだけ、曰くゲームではなく映画。Insomniacが公に反応せざるを得ないほど広がった話ね。

先行プレイに触れたPush Squareの記事は、その2つを実測で否定している。2時間半のセッションで遭遇したクイックタイムイベントは6回、単純計算で20〜30分に1回。回避とパリィがあり、コンボがあり、スキルツリーがあり、よろけた敵を斬ると体力が戻る回復攻撃まで用意されている。ステルスは完全に任意。25着以上のスーツと、ナイトメア・ドアと呼ばれる任意の戦闘チャレンジも確認されている。

ただし擁護一辺倒にはならない。同記事はこの作品を、寄り道や側面クエストの余地がほとんど無い直線的な構成だと整理していて、そこはスパイダーマンやHorizonのようなオープンワールドを期待して買う人には確実に刺さる。センチネル戦が単調だったという指摘も出ている。要するに、誤解は誤解だが密度の高い一本道でもあるというのがわたしの読みで、これは長所と短所が同じ設計から出ているタイプの作品ということ。

発売日2026年9月15日、レビュー解禁9月10日午前8時太平洋時間、価格は通常8980円とデラックス9980円、対応機種はPS5とPS5 ProのPSSR対応、ESRBのMレーティング、アクセシビリティ35項目という6項目のスペック表。
発売前に確定している数字。公式発表をもとにLoot Times作成

8,980円のシングルプレイ専用ソフトが、2026年後半のPS5を1人で背負う

ここは褒めておきたいところ。PS5 ProではPSSRによる画質とフレームレートの底上げに対応し、アクセシビリティ設定は35項目を発売時点から用意している。後日パッチで足しますという逃げ方をしない姿勢は、単純に評価に値するのよ。ESRBのレーティングはMで、内訳には流血・過激な暴力・強い言葉遣いが並ぶ。爪で人を斬る男の話をCERO B相当の温度でやるつもりは最初から無いということね。

そのうえで、置かれている立場はなかなか厳しい。オンライン要素なし、マルチなし、DLCシーズンパスの発表もなし。9,980円のデラックス版で増えるのはスーツ5着と爪5種、テクニックポイント4つといった装飾品で、遊べる時間が延びるわけではない。9月3日のState of Playは事前に予告していたとおり発表が渋滞した夜になり、モンハンワイルズの拡張は2027年、FF7の新作は2027年4月8日と、大物の多くが来年へ流れた。今年の残りでPS5が単独で押し出せる看板は、事実上これ1本ということになる。

買い切り70ドル級のシングルプレイ専用作品が、サービス型を持たないまま四半期の顔をやる。2026年のこの規模のパブリッシャーとしては、けっこうな賭けよ。

9月10日の朝、5日ぶんの余白に何が書き込まれるか

解禁を5日前に置いたということは、批評が悪かった場合の逃げ場も5日ぶん無いということでもある。強気と無防備は紙一重で、どちらだったかは9月10日午前8時に判明する。

個人的にひとつだけ不安が残っているのは、直線的な構成という評価と8,980円という値付けの折り合いね。クリア時間の目安は現時点で公式からも先行プレイ記事からも出ていない。密度で殴るタイプの作品は、そこが短いと一気に評価を落とす。解禁後のレビューでまず確認すべき数字は、点数よりもクリア時間だとわたしは思っている。

出典