22年前の『モンスターハンター』で、山の斜面みたいな背中を延々と登らされたあの古龍が帰ってくる。ラオシャンロン。9月3日のState of Playで初公開された『モンスターハンターワイルズ』の拡張『Ascendance』は、その一点で古いハンターの心臓を掴みにきた。
掴まれた。素直に鳥肌が立ったし、この判断は全力で褒める。だからこそ引っかかるのよね。実際に触れるのは2027年で、月すら出ていないという事実に。
2027年という言葉が、いま何を意味しているか
拡張の存在自体は新しい話ではない。カプコンが6月8日に投資家向けの資料で『Ascendance』の名前と「2027年」という枠を出している。9月3日に更新されたのは中身のほうで、映像で明かされたのは新フィールド「Skybound Eyrie」、新モンスターのアラケタとガンドラジャ、そして「Boost Bracer」という新装備だった。
PlayStation Blogの解説によれば、物語は本編の結末から数年後に進む。禁足地に現れたラオシャンロンの再来に備えて調査団が「マドイ砦」を築き、本編で子どもだったナタは一人前のハンターになっている。時間を飛ばして主人公格を成長させるのは、シリーズ拡張としてはかなり大胆な作りね。

ここで一度、数字の話をしないと公平じゃない。
1180万本と3040万本、ワイルズが背負っている差
カプコンのIR資料に載っている6月30日時点の累計は、ワイルズが1180万本。比較対象の『モンスターハンター:ワールド』は単体で2240万本、拡張『アイスボーン』を同梱したマスターエディション込みだと3040万本になる。『ライズ』ですら1930万本で、ワイルズは現時点でシリーズ3位にも届いていない。
PC Gamerは8月6日の記事で、カプコンがワイルズを中長期的にワールド超えへ持っていきたいと考えている一方、その差がおよそ1900万本あることを指摘していた。同記事によれば、2018年発売のワールドは直近四半期だけで78万本を積んでいる。8年前のタイトルに、まだ追いかけられている側なのよ、ワイルズは。
2025年2月28日の発売時は歴代最速級の初動だった。そこから失速した原因が主にPC版の動作品質にあったことは、当時さんざん書かれたとおり。カプコン自身も2026年前半の改善パッチと値下げの効果に触れている。つまり傷はふさがりつつある。ふさがりつつあるだけで、埋まってはいない。
アイスボーンは1670万本を積んだ。同じ札はもう一度切れるのか
拡張がシリーズの数字をどう動かすかについては、ワールドという露骨な前例がある。『アイスボーン』単体で1670万本。本編2240万本に対して、拡張ひとつで7割強を上乗せした計算になる。カプコンが『Ascendance』に賭けているのは、要するにこの再現ね。
ただし条件が違う。アイスボーンはワールド発売から約1年7カ月で出た。『Ascendance』が2027年のどこかだとすると、ワイルズ発売から2年以上、下手をすると3年近い。その間にハンターがどこへ行っているかは、Steamの同時接続数を眺めていれば誰でも想像がつく。
公式チャンネルの初公開トレーラーでは、雲の上に浮かぶ新フィールドの全景、群れで空から襲いかかるアラケタ、嵐雲を操るガンドラジャ、そしてラオシャンロンの巨体が順に映る。本編の延長ではなく別物を作っていると視覚だけで押し切る構成で、映像の出来だけなら文句なし。
HR40と14武器種、Ascendanceが最初に要求してくるもの
遊ぶ側の準備の話もしておく。PlayStation Blogが挙げている参加条件は、本編でハンターランク40に到達し、特定のストーリークエストをクリアしておくこと。マスターランクの拡張なので当然といえば当然だけど、発売から積んだままの人は2027年までに40まで上げる宿題ができたと思っていい。

「Boost Bracer」はスリンガーから起動する新装備で、14種類ある武器それぞれの持ち味を一時的に増幅する、という説明になっている。全武器種に個別の効果を用意するのは開発コストが重いはずで、ここに手を入れてきたのは本気の証拠だと受け取っていい。逆にいえば、ここがつまらなかったら拡張全体が沈む。
対応機種はPS5、Xbox Series、PC。加えてカプコンは本編のSwitch 2版を開発中だと6月に明かしている。Gematsuによれば価格はまだ出ていない。無料のプロローグ体験版は本編側ですでに配信中なので、様子見の人はそこから入るのが安上がりね。
渋滞していた9月3日の夜で、いちばん遠い発表だった
先日書いたとおり、9月3日はState of Playとコナミの配信が2時間差で並ぶ渋滞ぶりだった。その夜に出た発表を並べると、9月15日の『Marvel’s Wolverine』、10月1日の『Ghost of Yotei』新モード、そして『Ascendance』の2027年。日付が近いものほど盛り上がり、遠いものほど「で、それいつ?」が付いて回る。2027年春の『FF7 リベレーション』と同じ椅子に座らされたわけね。
Push Squareは9月3日の記事で、この拡張の見せ方に率直な興奮を示していた。わたしも映像の評価はそこに近い。ただ興奮と購買は別の口座から出ていくお金で、1180万本を3040万本に近づける仕事は映像ではなく発売日がやる。
カプコンは9月のTokyo Game Showでも『Ascendance』を出すとしている。そこで示すべき数字はモンスターの数でも武器の数でもなく、2027年の何月かという4文字だけ。それが出ない限り、ラオシャンロンはまだ画面の向こうで寝ている。
出典
- Capcom IR – Monster Hunter Wilds: Ascendance to Launch in 2027!
- PlayStation.Blog – Monster Hunter Wilds: Ascendance reveals new monsters, story details, and gameplay
- Gematsu – Monster Hunter Wilds expansion ‘Ascendance’ first trailer
- PC Gamer – Capcom says it wants Monster Hunter Wilds to outsell World over the medium to long term
- Push Square – Monster Hunter Wilds’ Massive New Expansion Looks Mind Blowing to Me
- Capcom – Platinum Titles