『ラスアス2』の有志マルチをソニーが停止、公式は2023年に自分で捨てた

ソニーが止めたのは、自分たちが2023年に捨てた遊びを、たった一人が8か月あまりかけて拾い直したものだった。

要点

  • 『The Last of Us Part II』PC版に対戦マルチを足す非公式modが、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)からの書簡を受けて公開中止に。日本だけの話ではなく公開そのものの取りやめ。書簡の存在は制作者本人の説明とその報道によるもので、SIE側の確認は取れていない。modは制作者のPatreon有料メンバーシップ経由で配られる予定だったとPush Squareは伝えている。
  • 日本では:modは全世界で公開中止のため国内でも入手できず、mod自体の価格も公表されていない。対象はPC版のみ。本編『Part II Remastered』の国内価格は、PS5版が2024年1月18日発売で5,480円、Steam版が2025年4月3日配信で5,480円(Steamの価格は2026年9月14日時点)。PlayStation Storeの国内ページもプレイ人数は「1人のプレイヤー」で、公式マルチの実装予定は未発表。
  • 『Part II』本編に公式の対戦モードは無く、代役だった『The Last of Us Online』も2023年に中止済み。今回のmod停止で、『Part II』で対戦を遊ぶ手段は無いままになる。

経緯だけ並べると、あまりに間が悪い。Naughty Dogは2023年12月15日に『The Last of Us Online』の開発中止を発表した。スタジオの全リソースを何年も注ぎ込む必要があり、将来のシングルプレイヤー作品の開発を著しく圧迫する、というのがVGCの伝えた理由。GamesRadar+によれば、4年近くを費やしたプロジェクトだった。その穴を埋めようとしたのが、個人modderのSpeclizer(VGCの表記はSpecizer)だった。

2013年の初代Factions同梱から、2020年のPart II発売、2023年12月15日のThe Last of Us Online中止、2026年9月の有志mod停止要請までを並べた年表
公式マルチが消えてから有志modが消えるまでの流れ。Loot Times作成

有志modの8〜9か月:1月10日の初映像から、9月末の公開予定まで

Speclizerが最初のゲームプレイ映像を出したのは2026年1月10日。GamesRadar+が見たその映像は、シアトルのマップ区画を2人が走り回るだけの協力プレイのデモで、戦闘すら入っておらず、対戦は将来の予定という位置づけだった。本人も出来の粗さを認めていて、完成の保証はない、実現できるかのテストだと言い添えていたとKotakuが伝えている。

そこから8か月あまり。夏のあいだにYouTubeへ映像を積み上げ、Insider Gamingによれば25分ぶんのプレイ映像まで公開された。同誌によると到達点は、本編のメニューとハブにそのまま統合され、『Part II』のロケーションと装備をそのまま使う形。Push Squareは、初代のFactionsに似た素直な対戦で、キャンペーンの舞台で撃ち合う内容だと書いている。VGCはさらに、カスタムパークと、聞き耳の効き方を制限する調整と、新規マップが載っていたと書いている。公開は9月末の予定だった。開発期間はVGCが約8か月、Push Squareが9か月と、媒体によって数え方が割れている。

そこにSIEの書簡が届いた。

Speclizer本人の説明によれば、内容はソニー・インタラクティブエンタテインメントの代理として、modを公開しないよう求めるもの。本人は落胆を示しつつ、今後は自分のオリジナル作品に向かうとしている。SIE側の説明は、確認できる範囲では出ていない。8か月あまりの成果物は、一度も公開されないまま終わる。

制作者は有料メンバーシップで配ろうとしていた

ここは制作者を弁護しにくい。Push Squareは、Speclizerがこのmodへのアクセスをパトロン向けのメンバーシップで収益化していた点を挙げ、それがソニーの介入を招いた可能性が高いと見ている。あくまで同誌の見立てだけれど、無償公開のmodと、金を取って配るmodでは権利者側の反応がまるで違うのは当然の話だ。

権利者が自社IPの二次利用を止める権利そのものは、誰にも否定できない。しかも今回止められたのは、公式マルチの代役として成立してしまう非公式の対戦機能。ソニーが将来また自前でマルチを出すつもりなら、先に非公式の実装が世に出て「こっちで十分」と言われる展開は避けたいだろう。判断としては筋が通っている。

制作者Speclizer、2026年1月10日に初映像、公開予定2026年9月末、対象はPC版Part II Remastered、Steam価格5480円、Steam評価55312件中90.9%が高評価という仕様表
止められたmodの基本情報と、土台になったPC版の現状(2026年9月14日時点)。Loot Times作成

それでも後味が悪いのは、止めた側が代わりを用意していないからだ。

初代には入っていたものが、『Part II』発売から6年戻ってこない

忘れられがちだけれど、2013年の初代『The Last of Us』にはFactionsという対戦モードがあった。Kotakuが書くとおり、ファンが後継を待ち続けてきたのはこのモードの記憶があるからだ。ところが2020年6月19日にPS4で発売された『Part II』は、Push Squareのデータベースでもプレイ人数「1(シングルプレイヤー)」。監督のNeil Druckmannは2019年9月の時点でマルチ非搭載を明言し、代わりに単独のオンライン作品を約束していた(VGC)。その約束が2023年に消えた。

結果として、『Part II』発売から6年、本編にもRemasteredにも公式の対戦は載っていない。今回SIEが止めたのは、その6年をたった一人が埋めようとした試みだった。

もっとも、Naughty Dogの2023年の判断そのものは今も支持したい。ライブサービスの運用に全社を差し出して、彼らが最も得意な語り口を失う未来より、シングルプレイヤーに戻る選択のほうがはるかに正しい。実際、PC版『Part II Remastered』はSteamで55,312件のレビューのうち50,298件が高評価、率にして90.9%で「非常に好評」を維持している(2026年9月14日時点)。これは買った人の満足度という指標で、批評家の採点とは別の物差し。しかもシングルプレイヤー作品としての評価であって、マルチ中止の当否を証明するものではない。それでも、単独で完結する物語に賭けた会社の作品が今も高く評価されているのは事実ね。

Naughty Dog公式チャンネルが出したPC版のアナウンストレーラー。今回のmodが土台にしたのは、この映像で紹介されているPC版そのもの。対戦を足そうとした試みが、どこに乗る予定だったのかが分かる1本だ。

ソニーは切るが、空いた席は埋めない

この夏からのソニーを並べると、落とす決断は速い。小島秀夫監督の『PHYSINT』はPlayStationの手を離れ、Xbox Game Studiosへ渡った。一方で作るものは作っていて、Gematsuの9月13日の週の日本国内発売リストには『Marvel's Wolverine』が載っている(Gematsu)。作るものは作る、いらないと判断したものは容赦なく落とす。企業としては健全ではある。

ただ、落としたあとに空いた席を長く放置すると、誰かが勝手に座る。今回はその誰かを追い出しただけで、席は空いたまま。SIEが書簡を送れるだけの権利を持っているのは確かだとして、『Part II』でオンライン対戦をやりたい人間に向けた後継の発表は、2023年12月以降まだ確認できていない。

modを止めた側が、次に何を出すのか

Speclizerのmodが完成品として面白かったかどうかは、もう誰にも検証できない。25分の映像しか残らず、公開予定日の前に消えた。個人のPatreon収益を前提にした配布計画だった以上、止められること自体に驚きはない。驚くべきは、止める相手がいるほどの需要が6年も放置されている事実のほうだ。

次にこの話が動くとしたら、SIEが『The Last of Us』のマルチを何らかの形で再開すると発表したときだけ。2023年12月15日の中止発表から、2年9か月近くが過ぎた。その沈黙を破る予定があるのかどうか、ソニーもNaughty Dogも、公の場ではまだ何も示していない。

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