『ホグワーツ・レガシー2』続編開発をワーナー株主レターで正式確認

4000万本売った作品の続編を、決算資料の一文で済ませてきた。

ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)が2026年8月上旬に公開した第2四半期の株主向けレターに、「second installment of Hogwarts Legacy」という一節が入っていた。トレーラーもロゴもティザーサイトも無い。ゲーム部門の収益見通しを説明する文脈の中で、今後のパイプラインの一例として、さらりと書かれていただけだ。

発表の形式そのものが情報になっている

華々しい発表イベントも組まず、決算資料の1行で続編の存在を明かす。プレスリリースというより「投資家向けの書類で口が滑った」に近い出方で、最近のゲーム業界ではまず見ない形だ。

ただ、これは事故ではないと思う。

株主向けレターは投資家に向けた法定に近い文書で、書く内容は当然精査されている。そこに載ったということは、社内では確定案件として扱われているということだ。一方で大々的に発表しないのは、まだ見せられる映像が無いか、見せる時期を選んでいるかのどちらか。「確定しているが、まだ売りたくない」段階だと読める。

前作はワーナー・ゲームス史上最大のヒットだった

Hogwarts Legacy公式チャンネルの前作ローンチトレーラー。4000万本を売った作品の空気は、ここで確認できる。

ホグワーツ・レガシーの実績。2023年にAvalanche Softwareが開発しリリース、全世界累計販売本数4000万本超、売上高10億ドル超、ワーナー・ブラザース・ゲームス史上最速記録
前作が残した数字。Loot Times作成

初代『ホグワーツ・レガシー』は2023年にAvalanche Softwareが開発しリリースされた。オープンワールドで魔法学校の生活を体験するという企画自体が新鮮で、発売直後から爆発的な売上を記録している。

海外報道によれば全世界の累計販売本数は4000万本を突破し、売上高は10億ドルを大きく超える規模に達した。ワーナー・ブラザース・ゲームスの歴代タイトルの中でも最速記録だ。この数字を見れば、続編投資の判断が下ったのはむしろ当然の流れね。

「数を絞った高確度タイトル」という方針の中の一手

ここ数年のワーナー・ブラザース・ゲームスは、順風満帆とは言い難かった。『Suicide Squad: Kill the Justice League』の不振、『MultiVersus』関連の混乱、複数スタジオの閉鎖。厳しい状況が続いていたのは海外でもよく知られている。

今回の株主レターでも、WBDは「数を絞った高確度タイトルへの規律ある投資」という方針を強調している。看板シリーズに資源を集中させる姿勢がはっきり出ている文書だ。

その数少ない「確信の持てるタイトル」の筆頭として名前が挙がったのが、『ホグワーツ・レガシー2』だ。ほかに出せる札があまり残っていない、とも読める。

実際、Avalanche Software自身も2024年の時点で続編を「最優先事項の一つ」と表現していたと報じられている。つまり今回のレターは、以前から燻っていた噂と社内発言を企業として正式に裏書きした格好に近い。

編集部の見解:黙って認めたのは、正しい判断だ

この件でいちばん興味深いのは、続編が来ること自体ではない。これだけ確度の高い企画を、あえて盛大に発表しなかったことのほうだ。

そして先に結論を書いておくと、この判断は正しい。全面的に正しい。

4000万本の続編は、普通なら単独のショーケースを組んででも見せにいく玉だ。それをやらずに決算資料で済ませたのは、直近の不振で「発表してから出るまでが長い」ことへの不信が積み上がっているのを、WBD自身が意識しているからだろう。

期待を早く煽るほど、発売までの空白が長く感じられる。前作から何年も待たせることが分かっているなら、静かに認めて、映像が揃ってから改めて売り出すほうが賢い。

ここ数年のゲーム業界は、実機映像が1秒も無い状態で豪華なCGトレーラーだけ流し、そのまま3年沈黙するのが定番になっていた。期待だけ先に燃やして、燃え尽きた頃に出す。あれで消耗したファンがどれだけいるか。

今回のWBDは、その真逆をやった。見せられるものが無い段階では、大きな声を出さない。地味だし、話題にもならない。でもこれが誠実な広報の形だと思う。前作の名前を出せば確実にトレンド入りできる状況で、あえてそれを使わなかったのは立派だ。

一次資料が読める発表、という珍しさ

細かいけれど、今回ひとつ良かった点がある。誰でも一次資料に当たれることだ。

ゲームの新情報は普通、非公開のプレス向け資料や関係者の証言が出どころになる。読者が自分で確かめる手段はほとんどない。ところが今回の出どころは米国SECに提出された株主向けレターで、EDGARで誰でも原文を読める。「second installment of Hogwarts Legacy」という文字列がそこにあるかどうかを、自分の目で確認できる。

この記事の参照元にも一次資料のリンクを置いてある。海外メディアの要約を経由せずに確かめられる情報は貴重なので、気になる人は当たってみてほしい。

逆に言えば、企業が投資家向けに書いた文書である以上、そこに載る表現は投資家向けに調整されているということでもある。「パイプラインが充実している」と示すのが目的の文脈で挙がった名前だという前提は、頭に置いておいたほうがいい。

発売時期は、まだどこにも書かれていない

今回の資料に、具体的な発売ウィンドウの記載は一切ない。

開発が前作発売直後の2023年頃から動いていたと仮定しても、gamescomやThe Game Awardsで映像が初披露される段階を挟むとして、実際の発売は2027〜2028年あたりというのが海外メディア各社の見立てで、この読みは妥当だと思う。ホグワーツ城やホグズミードといった舞台を土台として再利用できるぶん、ゼロから作るよりは効率が上がる可能性はあるけれど、それでも数年単位の話になる。

参考になるのは、同じ規模の続編がどれだけ待たされるかという実例だ。『GTA6』は前作から13年空いた。あちらは極端な例だとしても、看板タイトルの続編が「数年先」と言われたときの数年は、だいたい想像より長い。

続編に求められているのは、広さじゃない

内容面の課題ははっきりしている。

前作は「杖を使った戦闘の奥深さ」と「城の探索の楽しさ」が高く評価された一方で、「サブクエストの単調さ」「キャラクターの印象の薄さ」「オープンワールドとしての作り込み不足」が繰り返し指摘されてきた。

ホグワーツ・レガシー前作の評価。高評価は杖を使った戦闘の奥深さと城の探索の楽しさ、課題はサブクエストの単調さ、キャラクターの印象の薄さ、オープンワールドの作り込み不足
前作で分かれた評価。Loot Times作成

並べてみると、褒められたのは「場所」で、批判されたのは「人」と「物語」だと分かる。城は素晴らしかったが、そこにいる人物とやることが薄かった、という整理になる。

だとすれば続編でマップを広げるのは、たぶん解決策にならない。学園生活のパートを掘り下げて、キャラクター体験のほうを強化できるかどうか。そこが評価の分かれ目になりそうだ。

これは他の大型IPも同時に抱えている課題でもある。広さや自由度を追求するフェーズは一巡して、いまは「物語体験の密度」をどう上げるかに焦点が移りつつある。前作がボリューム過多と言われた『FF7』シリーズの完結編が、同じ論点を抱えているのと構図は似ている。

HBOドラマ版との並走

もうひとつ、WBDはHBO版『ハリー・ポッター』ドラマシリーズも進めている。同じIPの映像作品とゲームが並走する形になるわけで、IP全体の露出という意味では追い風になり得る。

ただ、原作の再映像化とゲームのオリジナル世界観では狙う体験が違う。相乗効果になるのか、同じ財布を自社同士で取り合うだけになるのかは、まだ読めない。

もっとも、ゲームと映像配信の距離が近づいているのは業界全体の流れではある。『GTA6』が実機映像の初出しをNetflixに置いたのがその極端な例で、あちらは配信プラットフォーム側がゲームの映像を目玉番組として欲しがった格好だった。同じIPで映像とゲームを持っているWBDの場合は、そもそも取り合わせを自社で決められる。使い方次第では、かなり強い手札になるはずね。

次に確かめたいのは、映像の初披露がいつ、どの舞台で来るかだ。決算資料で静かに認めた会社が、次にどれだけ大きな声を出すか。そこに今の自信の度合いが出る。

参照元