新シーズンの日付が出た。その瞬間、このゲームがいちばん触れられたくない話も一緒に燃え上がった。
『Last Epoch』を手がけるEleventh Hour Games(EHG)が、次期シーズン5「Rage of the Frostborn(氷の眷属の怒り)」を発表し、ローンチ日が2026年10月1日に決まったことを明らかにした。開発者向け月刊ニュースレター「Eterra Monthly」の7月号で、初のティザートレーラーとともにお披露目された形だ。
喜ばしい報せのはずが、コミュニティの反応は少し複雑だった。理由は日付そのものにある。
シーズン4から、また半年以上が空く

シーズン5のティザー。血と氷で斧を形作るあの映像はここで見られる。
直近のシーズン4からすでに半年以上が経過していて、10月1日まで数えるとさらに間が空く。過去には9カ月近いブランクが開いたこともあった。フォーラムやSNSでは「新情報はうれしいけど、間隔がglacial(氷河のようにゆっくり)すぎる」という声が出ている。
氷のシーズンにglacialを当ててくるあたり、皮肉としてかなり出来がいい。言われたほうはたまったものじゃないだろうけれど。
比較対象がはっきりしているのも辛いところで、『Diablo 4』は3カ月弱、『Path of Exile 2』も数カ月おきに大型アップデートを刻んでいる。EHG公式も「Season 5 is on everyone’s mind」(Eterra Monthly 7月号より)とコメントしていて、待望論の高まりを認識している様子はうかがえる。
ティザーが見せたのは、正体ではなく感情だった
公開されたティザー映像は短編ながら、シーズン全体のトーンを印象づける内容になっている。
映るのは、血と氷で斧を形作るかのような力を操る何者か。長年の恨みを溜め込んできたような激しい怒りの気配だけが伝わってきて、肝心の正体は明かされていない。「Frostborn(氷から生まれし者)」という呼称そのものが物語の核心を握っていそうな見せ方だ。
具体的な新クラスやスキルツリーの詳細、ボスの全貌は今後の続報待ちになる。
ちなみに7月号にはこのほか、Max Pita氏によるBleed Bladedancerのビルド特集や、開発チームの飼い犬を紹介する新コーナー「Pets of Epoch」なども載っている。
この「Pets of Epoch」、笑うところじゃなくて本気で見習ってほしい部分だと思っている。月刊ニュースレターを自前で出し続けて、ビルド特集を載せて、スタッフの犬まで紹介する。大手なら広報がまず止める企画だ。作っている人間の顔が見える距離を、意図して維持している。更新間隔で叩かれてもコミュニティが完全には離れないのは、こういう地味な積み重ねが効いているからだと思う。
そもそも『Last Epoch』は何が違うのか

2024年に正式リリースされたアクションRPGで、時空を超えて過去と未来を行き来しながら育成を進めるタイムトラベル要素と、パズル感覚で組み上げるスキルツリーが特徴だ。買い切り制ながら、シーズンごとに新コンテンツが追加される運営スタイルを取っている。
そして、オフラインプレイに完全対応している。
これは他のハクスラ大作にはほぼ無い強みだ。通信環境を気にせず遊べるし、サーバーの都合で遊べなくなることもない。オンライン常時接続が前提の『Diablo 4』とはここが決定的に違う。
更新が遅い理由は、たぶん説明できる
間隔の長さには背景がある。
EHGは韓国の大手パブリッシャーKraftonの傘下に入ったあと、開発チームの採用を積極的に拡大している。品質を維持しながらリリースペースを引き上げる、という方針を掲げてきた。
あわせて進んでいるのがPlayStation 5版の開発で、コンソール対応の作業がPC版のアップデート間隔に影響しているのではないか、という見方がコミュニティに広がっている。2026年のロードマップでは大型拡張「Orobyss」の投入とPS5展開が並行して示されていて、シーズン5はその延長線上にある一手だ。
つまり「サボっている」わけではなく、限られた人手を先の投資に回しているという構図だ。ただ、遊んでいる側にはその事情が1ミリも関係ない。理由がどれだけ立派でも、待ち時間は待ち時間でしかない。ここが長期運営の残酷なところね。
更新頻度は、本当に正義なのか
ここで一度、逆側から考えてみたい。
シーズン間隔の短さは、たしかに「戻ってくる理由」を作りやすい。ただ、それは同時にプレイヤーに常時接続を要求する設計とも表裏になっている。3カ月ごとにリセットが来る前提で組まれたゲームは、その周期に生活を合わせられる人に最適化されていく。
『Last Epoch』が持っているオフライン対応と買い切り制は、本来その逆の思想だ。自分のペースで、好きなときに、ネットがなくても遊べる。半年空くという事実は、その思想からすれば必ずしも失点ではない。むしろ「久しぶりに起動しても置いていかれない」ことのほうが、このタイトルの客層には効いている可能性もある。
ここは声を大にして言いたいんだけど、「久しぶりに起動しても置いていかれない」は、いま滅茶苦茶に希少な価値だ。3か月ごとにリセットして「今すぐ戻ってこい」と急かすゲームばかりの中で、待たせても切り捨てない設計を守り続けているのは、単なる開発の遅さではなく思想の話だと思う。
問題は、そこがうまく伝わっていないことのほうかもしれない。シーズンごとに驚きを投下し続ける『フォートナイト』のような設計が業界の標準として意識されている以上、「間隔が長い」は単純に弱点として読まれてしまう。違う土俵で戦っていることを、開発側がもっと明示的に言ってもいい気はする。
「Paradox Classes」という、燻っている論点
もうひとつ、コミュニティで議論を呼んでいる話がある。
拡張コンテンツはPC版購入者には追加課金なしで提供される予定になっている一方で、クラスの新しい遊び方を提供する「Paradox Classes」機能は課金要素として計画されている。
買い切り制を売りにしてきたタイトルが、遊び方そのものに値札を付ける。ここに敏感な反応が出るのは当然だ。拡張が無料なぶん収益をどこかで取る必要があるのは分かる。ただどこから取るかで、作品の性格そのものが変わる。外見や利便性なら飲み込まれるけれど、ビルドの選択肢に値札を貼った瞬間、それは「金でビルドを買うゲーム」に片足を突っ込む。ここはシーズン5の中身と同じくらい、10月以降の評価を左右する。
編集部の見解:正念場という言葉が似合う位置にいる
『Last Epoch』は、シンプルで分かりやすいビルド構築とオフライン対応という独自の強みで、根強いファン層を築いてきたタイトルだ。2大巨頭の隙間で、確かな居場所を作ってきた。
ただ、シーズンの更新頻度で水をあけられているのは否めない。プレイヤーの可処分時間は有限で、遊ぶものが決まってしまえば戻ってくる理由は薄れていく。しかも今年の年末は、『Path of Exile 2』が12月11日に基本無料化して正式版に入る。ハクスラを触りたい人の選択肢が、無料で一気に増える。
10月1日という日付は、無料の津波が来る前に一度こちらへ引き戻しておく、という位置取りに見える。約2か月の猶予をどう使うか。
その意味で、今回の「Rage of the Frostborn」が単発の新ボス追加にとどまるのか、クラスバランスや新システムまで踏み込んだボリュームを持ってくるのかは、かなり重い分岐になる。Krafton傘下でのリソース増強がどこまで形になっているかが、ここで初めて目に見える。
10月1日に何が出てくるか。答えはそこで出る。