『ウィッチャー3』リマスターは無料、ただしWindows 10のPCは9月29日に置いていかれる

無料という言葉は、たいてい条件の話を後ろに隠している。CD PROJEKT RED が9月29日に配信する『ウィッチャー3 ワイルドハント』リマスター版は、すでにゲームを持っている人間から1円も取らない。太っ腹だ。ただしPC版に関しては、その太っ腹を受け取れるかどうかが、あなたのマシンに Windows 11 が載っているかどうかで機械的に決まる。

Valve が公開している2026年7月のSteamハードウェア調査を見ると、Windows 10 の利用者はまだ23.30%残っている。Windows 11 は70.26%。ざっくり、PCゲーマーの4人に1人が締め出される側に立っている計算になる。

無料の配り物に、入場券が要るという話だ。

ウィッチャー3リマスター版の基本情報をまとめた表。配信日2026年9月29日、対応機種はPC・PS5・Xbox Series X|S・Switch 2、既存所有者は無料アップグレード、拡張パック2本が無償化、PC最低要件はWindows 11とDirectX 12とSSD 70GB、有料拡張Songs of the Pastは2027年配信。
リマスター版の基本情報。無償化される拡張2本は Hearts of Stone と Blood and Wine。無料の範囲と有料の範囲がきれいに分かれている。Loot Times作成

「Windows 11 のみ」の一行が、23.30%を弾く

発表そのものは8月25日、gamescom の Opening Night Live でのことだった。動きが出たのはその翌々日で、CD PROJEKT RED がサポートページに新しいPC動作環境を掲載した。そこに並んでいたのは、64bit版 Windows 11 のみという一行と、DirectX 12 専用という一行、そして HDD は非対応で 70GB の SSD が要るという一行だ。

Windows 10 は2025年10月にサポートが終了している。だから開発側が切り捨てる判断そのものは、技術的には筋が通る。DirectX 12 だけに絞ればレンダリング側の分岐は消えるし、パストレーシングやレイ再構成を前提にした作りなら旧OSを担ぐ理由は薄い。

問題は、切り捨てたことではなく、切り捨てた上で無料と呼んでいることのほうにある。マイクロソフトが Windows 11 に課した TPM 2.0 の要件は、ソフトの都合ではどうにもならない。PC Gamer は今年5月の記事で、Windows 10 に留まっている層の多くは好みで残っているのではなく、ハードごと買い替えないと上がれない事情を抱えていると指摘していた。その分析が正しければ、9月29日に取り残されるのは「アップデートを面倒がった人」ではなく「買い替える金がまだ用意できていない人」だ。

最低要件は11年で丸ごと作り替えられた

2015年のオリジナル版と2026年リマスター版のPC最低動作環境を比較した表。OSはWindows 7/8からWindows 11のみへ、CPUはCore i5-2500KからCore i5-8400へ、GPUはGTX 660からGTX 1660またはRX 5500 XTへ、メモリは6GBから12GBへ、ストレージは40GBのHDD可から70GBのSSD必須へ、APIはDirectX 11からDirectX 12専用へ変更された。
2015年版と2026年版の最低要件の差。数字で見ると容赦がない。Loot Times作成

2015年のオリジナル版は、Core i5-2500K と GeForce GTX 660、メモリ6GB、ストレージ40GBで動いた。当時としても要求は高めだったが、HDD でも起動はした。リマスター版が求めるのは Core i5-8400 と GTX 1660、メモリ12GB、VRAM 6GB、そして 70GB の SSD である。推奨環境まで上げると Core i7-8700K と RTX 2060 Super が並ぶ。

面白いのは、この数字が2026年の新作としては全然大きくないことだ。GTX 1660 は7年前のミドルレンジだし、70GB という容量は、100GB超えが当たり前になった昨今のシングルプレイ作品と比べればむしろ良心的ですらある。KitGuru はそこを評価していた。要するにCD PROJEKT RED は、ハードルを上げたというより、11年ぶんの前提をまとめて更新した。

ただし更新の仕方が階段ではなく崖なので、崖の下に人が残る。

それでも、この無料化は全力で褒めていい

ここまで文句を並べたが、やっていること自体は今年いちばん気前がいい部類だ。リマスター版は PC、PS5、Xbox Series X|S、Nintendo Switch 2 の4機種で、既存所有者に無償で降ってくる。しかもゲーム本編を持っているだけで、拡張の Hearts of Stone と Blood and Wine まで無料になった。アナウンストレーラーでは30を超える改良点が列挙された。戦闘アニメーションの刷新、スキルツリーの作り直し、トランスモグ、写真モードの拡張、クロスプラットフォーム対応のMOD、DLSS 4.5 と FSR 4 と XeSS 2.0 への対応が含まれる。

比較対象を思い出すといい。GTA トリロジーのリマスターは金を取った。ラスト・オブ・アス パート I の作り直しも金を取った。旧作を磨いて売り直すのは業界の定番の稼ぎ方で、誰もそれを違法とは言わない。そこへCD PROJEKT RED は、11年前のゲームに大掛かりな手を入れて、値札を貼らずに置いた。Creative Bloq はこの判断がプレイヤーからの評価を大きく押し上げたと伝えている。

下心がないとは言わない。2027年には有料拡張 Songs of the Past が控えている。5月27日に発表され、gamescom で初めて中身が見えたこの拡張は、CD PROJEKT RED と Fool’s Theory の共同開発で、吟遊詩人ダンディリオンの故郷レッテンが舞台になる。さらに2028年ごろには『ウィッチャー4』が来るとみられている。無料で配った本編は、その2本への導線として完璧に機能する。それでも、計算ずくの気前のよさは、計算もない出し惜しみよりずっとマシだ。

公式トレーラーで確認できること

CD PROJEKT RED 公式チャンネル The Witcher が公開したアナウンストレーラーで、刷新された植生と光源、新しい印の演出、追加されたフィニッシュモーション、そして配信日の告知までが続けて流れる。実機の見た目がどう変わるかは、文章を10行読むより30秒見たほうが早い。

9月29日以降、いまのバージョンはどこへ行く

Switch 2 への移植という点では、8月28日に出たエルデンリングのSwitch 2版が事前の酷評から評価を戻した件が近い前例になる。携帯機で重量級を動かす話は、発売してみないと本当のところが分からない。

PC側で引っかかったままなのは、旧バージョンの扱いだ。CD PROJEKT RED のサポートページには、以前のバージョンに戻すことは可能だと書かれている。ただし、その巻き戻しがどのストアで、どういう形で、いつまで維持されるのかまでは書かれていない。Steam のベータブランチとして半永久的に残るのか、GOG では別扱いなのか、何年後かに静かに消えるのか。ここが決まらないと、Windows 10 のまま踏みとどまっている23.30%は、9月29日に自分のライブラリで何が起きるのかを予測できない。

技術要件でユーザーを選別した結果が荒れた例なら、Halo: Campaign Evolved がシングルプレイなのに常時接続を要求して賛否両論に沈んだ一件を見ればいい。あのときも設計判断そのものは説明可能で、説明されなかったのは影響範囲のほうだった。

無料アップグレードは9月29日に来る。誰の手元に来ないのかを、CD PROJEKT RED はまだ一度も名指ししていない。

出典